第55章 余計な大冤種

藤堂譲は藤堂若葉を連れて病室の前に着くと、ドアをノックしようとした。その時、ドアのガラス窓越しに、綾瀬悠希のベッドの前に一人の男が座っているのが見えた。

その男は綾瀬悠希の同僚、杉山遠だった。

前回、綾瀬悠希が入院した時も彼は病院に来ていたが、まさか今回もこれほど積極的だとは。

中の二人は話が弾んでいるようで、楽しげな笑い声が時折ドアの隙間から漏れ聞こえてくる。それを耳にした藤堂譲は、胸に何かがつかえるような息苦しさを感じた。

「パパ……」

「しーっ」藤堂譲は慌てて藤堂若葉が声を出すのを制した。「綾瀬先生にはお客さんがいるみたいだ。少しここで待っていよう」

「いや」

藤堂...

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