第83章 もちろん旦那様と呼ぶのさ

「どうしたの、悠々ちゃん。何か急用?」楠本南が尋ねた。

「ううん、なんでもないわ。食事を続けましょ」

 綾瀬悠希は桜井翔平からのメッセージには返信せず、スマホの画面を消して脇に置いた。

 二人は食事とおしゃべりを楽しみ、気づけば時刻は十一時近くになっていた。

 綾瀬悠希が桜井家に戻ったのは十一時半を回った頃だった。家中の明かりがついており、桜井恵那以外の全員が揃っている。まるで彼女の帰りを待ち構えていたかのように。

 本来なら温かい家族の団欒というべき光景だが、綾瀬悠希の目には滑稽にしか映らなかった。

 桜井家にとって利用価値がある時だけ、彼らは少しばかり愛想良く振る舞うのだ。

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