第86章 ご健康をお祈りします

就寝の時間が迫る頃、藤堂家の御隠居からまた藤堂譲の元へ電話がかかってきた。

 綾瀬悠希が去ったあと、藤堂譲はずっと書斎に籠もっていた。携帯電話を手に取り、画面を見ずとも、それが祖母からの着信であることはわかっていた。

 昨晩も祖母からは何度か着信があったのだが、あまりに多忙だったため、出ることもできなかったのだ。

 通話ボタンを押した途端、藤堂家の御隠居は不機嫌も露わに彼を叱責した。

「譲ちゃん、どうして昨夜は電話に出なかったの?」

「会議中だったんだ。終わった頃にはもう祖母さんも寝ている時間だと思ったから、掛け直さなかった」

「そうかい、そうかい」

 藤堂家の御隠居の声色が、ふ...

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