第98章 全ての幻想を打ち砕く

 桜井恵那が藤堂明美の家で夕餉を楽しんでいる頃、桜井家の大奥様は血眼になって鏡台をひっくり返していた。

 以前、綾瀬悠希から贈られたエメラルドのネックレスだ。袖を通したのは一度きりである。

 麻雀仲間から「それは世界に三本しかない限定品だよ」と聞かされ、あまりの恐れ多さに封印してしまったのだ。こんな高価なものを失くしては大変だと、厳重にしまい込んでいたはずだった。

 明日は茶飲み友達とアフタヌーンティーの約束がある。その中の一人が、このネックレスを見たがっていた。「目の保養に」と拝見するのを楽しみにしていたのだ。

 ところが、肝心のブツがどこを探しても見当たらない。

 使用人を総動員...

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