第30章 心の中に私がいるか

「目が赤いな」

珍しく、わずかにやわらいだ声音だった。

「まるで子ウサギみたいだ」

末永言葉はきょとんとして、振り向いた。

子ウサギみたい――って、何それ。

こっちは落ち込んでるのに、この人は冗談でも言ってるつもりなの?

「深沢承弦!」

泣いたあとの掠れがまだ残る声で、言葉は睨みつけた。

「暇なの?」

深沢承弦は口元をかすかに上げた。彼女は目を吊り上げている。目の縁はまだ赤いくせに、必死に強気な顔を作っていた。

けれど、まるで迫力がない。

むしろ少し――可愛い。

堪えきれず、深沢承弦はふっと身をかがめ、彼女の目尻にそっと口づけた。

末永言葉の体がぴたりと固まる。

も...

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