第54章

男は脚を上げて外へ突っ込んだ。動きは信じられないほど速く、警備員が次々と飛びかかるものの、ことごとく投げ飛ばされていく。

「追え!」

警備員たちが追いすがったが、男の姿は角を曲がった先で、もう消えていた。

温水庭三の顔色がいっそう険しくなる。

「いいか、ちゃんと答えろ。昨夜、いったい何があった」

温水真雲は俯いたまま、涙をぽろぽろ落とした。

「わ、私は……莉々の家に……」声は途切れ途切れだ。「結婚式なんて出たくなかった……見たくなかったの……彼が、ほかの人と結婚するところなんて……」

温水庭三は長いこと彼女を見据えていた。氷みたいに冷たい視線。

「帰るぞ」

踵を返して歩き出...

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