第260章 赤の他人

福田祐衣はオフィスまで一直線に戻ると、扉を内側からカチャリと施錠し、デスクを睨みつけたまま動かなかった。長い沈黙の末、唇の端だけで冷たく笑う。

どこの馬の骨とも知れない子。

――その言葉こそが、柏原堅太が胸の奥に隠し持っていた、彼女へのいちばん正直な呼び名だったのだ。

祐衣はゆっくりと目を閉じる。柏原家に「娘」として迎え入れられたあの日の光景が、ぱらぱらと脳裏に甦っていく。

彼女が自分は柏原家の娘なのだと信じた理由は二つあった。柏原家が用意した親子鑑定があったこと。そして――名門である柏原家が、血のつながらない子をわざわざ「娘」として認めるために、あれほど手間をかけるはずがない、とど...

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