第30話

里香の視点

その夜、私は約束の時間通りにレストランへ到着した。

司はすでに着いており、奥まった静かな個室を取ってくれていた。

まずは三十分ほどプロジェクトの詳細について話し合い、それからようやく今日の出来事へと話題を移した。

「九条さん、今日は本当に助かりました」

私は水の入ったグラスを掲げた。

「お酒の代わりに、お水で。乾杯」

彼は軽くグラスを合わせると、一切の誤魔化しがない真っ直ぐな視線を向けてきた。

「パートナーの評判を守るのは、九条グループの一貫した方針です。お気になさらず」

少し間を置き、声のトーンが一段低くなる。

「それに、私は自分の判断を信じています。あなた...

ログインして続きを読む