第36話

和也の視点

里香は声を落として俺に問いかけた。その眼差しは、冷たい刃のように揺るぎない。

俺はグラスを持ったまま、すぐには口を開かなかった。

リビングでは暖炉の火がまだ燃えていて、二階からは時折、両親が歩き回る音が聞こえてくる。今、この場所で話を切り出すべきではない。

「言葉通りの意味だ」

俺はグラスをテーブルに戻した。

「俺たちの間で、確かに対応を間違えた部分はある。これからは、きちんと話し合って解決すればいい」

「きちんと話し合う」

彼女はその言葉を反芻するように繰り返し、微かに口角を引き上げた。

「分かったわ」

たったそれだけ。他には何も言わず、何も聞かなかった。

...

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