第41話

里香の視点

帰路につく頃には、夜の闇が一段と深くなっていた。

バッグの中のスマホが、不意に短く震えた。

取り出して画面を見ると――『蓮』という名前が光っている。

その文字を数秒見つめてから、通話ボタンを押した。

「ママ」

受話口から聞こえてきた蓮の声は、どこか取ってつけたような従順さを帯びていた。

「今日、白石家には帰らないよ。水原邸に帰るんだ。ママも一緒に帰ってくる?」

ひどくぎこちない口調。言葉の端々に不自然さが滲んでいる。――まるで、暗記した台詞をうまく言えずにいるみたいに。

私が口を開くより早く、電話の向こうから寧々の声が微かに漏れ聞こえた。

『蓮、パパもママとお...

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