第45話

里香の視点

早朝。着替えを済ませ、軽くメイクを施してから、鏡の前に数秒だけ立ち尽くした。

今日は水原グループへ、提携の交渉に行く。

これはただの仕事だ。そう自分に言い聞かせる。

鏡に映る私は、凪いだ水面のような表情をしていて、何の感情も読み取れない。

それでいい。

スマホが鳴った。司からだ。

「下に着いたよ」

「わかった、すぐ降りる」

司は控えめな黒のベンツを自ら運転してきていた。

助手席のドアを開けて乗り込み、彼に向かって軽く頷く。

「お手数をおかけします、九条さん」

「ついでだからね」

彼はエンジンをかけ、私の顔に少しだけ視線を留めた。

「昨夜はよく眠れなかっ...

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