第10章

高木愛美視点

 平野綾子からの電話を受け、私はすぐさま荘園を後にしてタクシーに飛び乗った。

 彼女の話によれば、セント・メアリー病院に重症患者が運び込まれ、彼を救えるのは私しかいないのだという。

 私には、夫である高木文弘さえ知らない秘密があった。

 ――人狼を治癒する能力。

 それを知っているのは、私と平野綾子の二人だけだ。

 何年も前、久保家に引き取られた私は、久保理沙から革のベルトや籐の鞭で容赦なく打ち据えられる日々を送っていた。

 私には内なる狼が存在しないため、自己治癒力が普通の人狼よりも遥かに劣っていたのだ。

 ある時、半死半生になるまで痛めつけられた私は、そのままセ...

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