第138章

三人称視点

 クレセントムーン・ヴィラのロビー。

 鼻をつくような濃烈なワインの匂いが充満する中、高木文弘は足の踏み場もない惨状の中に立っていた。靴の底で砕けたガラスの破片が鈍い音を立てる。彼の機嫌は、床に散乱するゴミ屑よりもさらに最悪だった。

 つい先ほど、彼はまるで変質者のように、数十人もいるメイド全員の手をくまなく調べ上げた。

 だが結果は、見事なまでに空振りだった。

「南川正晴」

 高木文弘は勢いよく振り返り、眉間を深く刻んで険しい声を放った。

「この別荘にいる人間は、これで全員か?」

 床に這いつくばって掃除を続ける使用人たちを顎でしゃくり、鋭い眼光を放つ。

「まだ顔を...

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