第144章

三人称視点

 高木文弘は床に落ちた身分証に目を落とし、それから目の前で震えている少年を見据えた。

 身分証に記された名を読み上げ、冷ややかな声で問う。

「お前、向井恭平とどういう関係だ」

 その名を聞いた途端、少年の身体はさらに激しく震え上がった。

 彼は答えず、ただ腕の中の札束を必死に抱え込む。それはつい先ほど、ATMから引き出したばかりの現金だった。

「俺の金だ!」

 少年は叫んだ。恐怖で声が裏返っている。

「奪わないでくれ! これは俺の金なんだ!」

 高木文弘は眉根を寄せた。

 ATMの微かな明かりを頼りに、目の前の少年をじっくりと観察する。少年は異常なほど痩せこけて...

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