第16章

愛美視点

 久保理沙の足が私の腹に深く突き刺さろうとしたその瞬間、横から一人の男が猛烈な勢いで飛び込んできた。

「失せろ!」

 頭上から、よく知る声が降ってくる。

 高木文弘だ。

 彼は片手で私を庇い、もう一方の手で虫ケラでも払うかのように理沙を乱暴に突き飛ばした。

 勢いよく尻餅をつき、理沙が地面に倒れ込む。

「いったぁ! ちょっと、誰よ!」

 理沙は尻をさすりながら金切り声を上げた。

 だが、その視線が文弘を捉えた途端――顔に浮かんでいた怒りは一瞬にして消え失せ、へりくだった卑屈な笑みへと貼り替わった。

 文弘はポケットから小切手を一枚取り出すと、無造作に理沙の顔面へと投げ...

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