第19章

三人称視点

 平野綾子の言葉は一本の棘となって、高木愛心の奥深くに深く突き刺さっていた。

 もし南川茜が高木文弘の命を救ったというのが真っ赤な嘘だとしたら、愛美がこの一年間耐え忍んできたことや、惨めなまでに捧げてきた愛は、すべてが完全な笑い種でしかない。

 過去を完全に断ち切る前に、どうしても真実を知らなければならなかった。

 馬鹿みたいに、巨大な嘘を抱えたまま新しい生活を始めるわけにはいかないのだ。

 セント・メアリー病院の特別客員医師という肩書きが、愛美に便宜をもたらした。

 彼女は病院内部のアーカイブシステムにアクセスし、高木文弘の名前と、暴動が起きた年を入力する。

 長年...

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