第35章

高木文弘視点

 高木愛美は俺を睨みつけていた。その瞳には警戒と憎悪が渦巻いている。

 俺が引き裂いた襟元をかき合わせるその姿は、まるで毛を逆立てた猫のようだった。

「出て行け」

 彼女は俺に向かって怒鳴りつけた。

 俺は背を向け、乱暴にドアを閉めた。

 リビングへ歩み寄り、煙草に火を点ける。ニコチンでは胸の内の苛立ちを抑えきれず、むしろその怒りの炎をさらに燃え上がらせるだけだった。

 ブーブーとスマホが震え、野口裕史からのメールが届いた。

 添付ファイルを開くと、そこには妊婦健診のエコー写真のスキャン画像があった。

 この書類には見覚えがある。裁判所の前で見たものだ。そこに記載...

ログインして続きを読む