第53章

クレセント・パックのアルファである南川正晴は、手の中にある木箱をじっと睨みつけていた。

「お父様! お願い、助けて!」

 南川茜の完璧だったメイクは、すでに涙で見る影もなく崩れていた。

「高木文弘にこの箱を渡すわけにはいかないの。中身を見られたら、あの時彼を助けたのが愛美だったってバレてしまうわ」

「そうなったら、彼は私を完全に捨てて、愛美を甘やかすに決まってる! あんな女に負けるなんて絶対に嫌!」

「黙れ!」

 正晴の怒鳴り声が響く。彼は自身の娘を忌々しげに一瞥した。

「この馬鹿者が! 長年かけて、男ひとりの心すらまともに掴めんとは!」

「お前をあの娘の身代わりに仕立て上げた...

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