第57章

三人称視点

 高木文弘の血走った赤い瞳が、高木愛美を射抜くように見据えていた。

 その地を這うような哀願に、高木愛美は息が詰まる思いだった。

 彼女は顔を背けた。彼のそんな姿など直視したくなかった。

 少しでも見れば、決心が揺らいでしまいそうだったからだ。

 だが、高木文弘は不意に手を伸ばし、彼女の指先をそっと包み込んだ。

 腫れ物にでも触れるかのようなおずおずとした感触に、高木愛美の心臓が大きく跳ねる。

 高木文弘の声は、消え入りそうなほど低かった。

「俺は君を傷つけ、裏切り、あわや俺たちの子供まで死なせるところだった」

「俺はクソ野郎だ。死んで当然のアホだ」

 高木愛美は目を...

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