第五十九章

第三者視点

 丸山大翔の運転はひどく安定していたが、助手席に座る高木愛美の張り詰めた神経は一向に休まる気配がなかった。

 先ほどの逃走劇で、彼女はすでに全身の気力を使い果たしていたのだ。

 車はムーンリバー・パックの領地へと入り、丸山大翔のマンションの前に静かに停まった。

 高木愛美は彼に支えられるようにして部屋へ入り、リビングのソファに腰を下ろした。

 汚れきったスカートの裾。素足には無数の切り傷と生々しい血の痕がこびりついている。

 誰の目から見ても、惨憺たる有様だった。

 そっと目を閉じると、血に染まった高木文弘の顔が脳裏にフラッシュバックする。

 その瞬間、心臓がギリギリと締め...

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