第104章

「下田誠治、彼女の戯言に耳を貸さないで」

 肩で息をする坂下あゆみが、入り口に仁王立ちして声を張り上げた。

「高橋真美、身の程を知りなさい。会社の商談に口を出すなんて、とっとと出て行って」

 呼び捨てにされたにもかかわらず、下田誠治は怒る素振りすら見せない。私と坂下あゆみを交互に見やり、隠しきれない笑みを口元に浮かべると、野次馬のような態度で私に向かって肩をすくめた。

「私も知りたいですね、自分の立場というものを。あるいは、あなたが教えてくださる?」

 私は急須を手に取り、下田誠治に茶を注ぎながら、坂下あゆみを横目でねめつけた。

「あなた!」

 坂下あゆみが私を指差して声を荒ら...

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