第105章

「……」

 坂下直樹は何かを言いかけたが、すぐに愛想の良い笑みを浮かべて言った。

「もちろん、君の名義に移すのが一番安全だよ。安心して、数日中に送金の手続きを済ませるから」

 私はただ頷いた。その後、坂下直樹はさらに機嫌を取ろうとしてきたが、私はすべて拒絶した。私から良い反応が得られないと悟った彼は、会社の不祥事の後始末を口実にその場を去っていった。

 坂下直樹の背中を見つめながら、胸が締め付けられるような悲しさを覚えた。もう、この男には何の期待もしていないはずなのに。それでも、今日の彼の振る舞いには失望を隠せなかった。もしかしたら……あくまで「もしかしたら」の話だけれど、彼が会議室...

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