第106章

「ほら、真美さん。どう? この家、気に入ったかい」

 義母は私の手を引くと、その甲をぽんぽんと優しく叩きながら、慈愛に満ちた眼差しを向けてきた。

 気に入った、ですって?

 もしあの『金地ハウス』の物件を見ていなければ。もし直樹とあゆみの関係を知らなければ……きっと、この家を気に入っていたでしょうね。確かに狭いけれど、以前の私なら――直樹を信じきっていた天真爛漫な私なら、彼が一生懸命準備してくれたことに感激して、小躍りして喜んだはず。

 でも今は違う。この世に『もしも』なんて存在しない。一つだってありはしない。ましてや、これほど多くの『もしも』なんて、あるわけがないのよ!

 私は何...

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