第122章

私は笑いが込み上げてくるのを必死に堪え、伊藤香織に出かけると告げた。彼女は同行したがった。つい先ほどの出来事があったばかりだし、私を一人にするのが不安なのだろう。だが、私はあえて断った。私の決意が固いのを見て取ると、彼女はそれ以上強くは言わなかった。ただ、私が玄関を出る際、護身用にと催涙スプレーをポケットに押し込んでくれただけだった。

催涙スプレーをポケットの奥に無造作に突っ込み、家を出る。エレベーターが一向に来ないので、待ちきれずに階段を小走りで駆け下りた。外に出て、入り口で左右を見渡してみる。だが、探しているあの姿が見当たらない。期待していただけに、失望の色が胸に滲んだ。

「僕を探し...

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