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「お母さん!」

私の姿を見るなり、さくらは飛んできた。私はその勢いを受け止めて抱きしめ、小さなほっぺにキスをした。すると、さくらも真似をして私の頬にチュッとキスを返してくれた。

「ありがとう」

私は伊藤香織に礼を言った。この間、彼女がいなかったら、自分がどうなっていたか本当に分からない。

伊藤香織は首を横に振った。

「お礼なんていいから、これからどうするか考えなよ」

不思議に思って彼女を見つめると、私はそのままベランダへと引っ張られた。そして彼女は声を潜めて言った。

「坂下家の連中、おかしくなってるよ。さくらが私の家にいるって知ってから、毎日玄関の前に居座って、脅したりすかした...

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