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「てめえ……」

坂下あゆみが口汚く罵り始めたが、私も黙って見過ごすつもりはなかった。包丁を手に取り、真っ直ぐに彼女を見据える。

「母親になる人間なんだから、少しは言葉に気をつけたらどう? じゃないと、腹をかっさばかれて中の子供を引きずり出されるわよ、坂下あゆみ!」

私が握りしめた包丁を見て、彼女は喉まで出かかった言葉をすべて呑み込んだ。

坂下直樹は引き返すしかなく、結局私たちは双方とも書類に署名し、捺印を済ませた。そして、それぞれが契約書を一部ずつ手元に収める。

「真美、もう少しだけ話し合えないかな?」

坂下直樹はなおも最後の悪あがきをしようとしたが、私は冷淡に首を振り、有無を言...

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