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私の言葉に、相手は鼻で笑った。

「坂下直樹なら当然知っているさ。あんたの電話番号を教えたのもあいつだからな。しらばっくれる気かい? こっちで調べはついてるんだ。坂下商事の代表取締役はあんたで、坂下直樹じゃないだろう」

代表取締役?

かつて会社を経営していた人間として、代表が負うべき責任の重さには敏感なはずだった。だが、長年家庭に入り、夫を支え子育てに専念するうちに、その感覚はすっかり麻痺していたのだ。

そう、私は今でも坂下商事の代表取締役。

つまり、相手の言うことが事実なら、今の坂下直樹は何の責任も負わずに逃げおおせることができ、代表である私だけが全ての責任を被ることになる!

と...

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