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静まり返ったオフィス。私は力なくその場にへたり込み、傍らに寄り添う伊藤香織が優しく声をかけてくれた。

「焦らないで、真美。契約書があるじゃない。坂下商事は坂下直樹に名義変更するはずだったんだから、この件はあいつが責任を取るべきよ。さあ、直樹のところに行こう!」

私は首を横に振り、力なく苦笑した。

「直樹は明らかにシラを切るつもりよ。契約書があっても、問題が起きた時点での法人は私なんだもの。それを理由に契約の履行を拒否できるわ。よくも計算し尽くしてくれたわね、坂下直樹……!」

その名を口にするだけで歯ぎしりするほど憎たらしく、とめどなく涙がこぼれ落ちる。その間も私の携帯電話はひっきりな...

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