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伊藤香織は私をちらりと見やり、私はこくりと頷いた。

「彼女の言う通りよ」

私は事前に会社の資料すべてに目を通していたため、財務状況については掌を指すように把握している。だから坂下あゆみが嘘をついていないことも分かっていた。ここにある備品の多くは、確かに彼女の個人名義で購入されたものだ。深く追及すれば会社の金が使われていると分かるが、それには手間も時間もかかりすぎる。たかだかこれっぽっちの物のためにそこまでする価値はないと放置していたのだが、まさか今になって、私をコケにするための格好の口実として使われるとは思いもしなかった。

あれこれと物色する坂下あゆみの態度には腹が立って仕方がなかった...

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