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霧雨みよはわざと『コト』という言葉にアクセントを置いた。江川金生はもちろん、私にまでその媚態がはっきりと伝わってくる。そんな彼女を見るたび、これこそが彼女の得意分野なのだから任せておけば間違いないと、心の中で言い聞かせるのだ。

江川金生は頷いたかと思うと、すぐにまた首を横に振った。まるで私たちの魂胆を見透かしたかのように言う。

「契約を結ぶのは構わん。だが、このままハンコを押すわけにはいかんだろ。せめて、先に手付金くらいもらわないとな」

そう言いながら、江川金生は今にも涎を垂らさんばかりの顔をしている。私を飛び越えて霧雨みよのそばへにじり寄ろうと、これ見よがしに首を伸ばしていた。

す...

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