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江川金生が選んだのは、J市でもなかなか評判の良い料理屋だった。彼は店主と何らかの繋がりがあるらしく、私たちが到着した時にはすでに店主が出迎えのために玄関で待機していた。顔を合わせるなり、二人は親しげに挨拶を交わす。だが、江川金生が私を紹介した瞬間、店主の動作がひどく強張ったのを私は見逃さなかった。

「何か問題でも? 成田店長」私は不思議に思って尋ねた。

「いえいえ」成田店長は慌てて笑顔を作り、首を横に振った。「何でもありませんよ。ただ、坂下商事のような大会社のトップが、まさか女性だとは思いもしなかったものでして。高橋社長、いやはやお見事ですな」

「そうでしょう!」江川金生が調子よく相槌...

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