第63章

坂本天宇が私に温もりを与えれば与えるほど、夫である坂下直樹への憎しみは膨れ上がっていく。出会ってまだ日の浅い彼がこれほどまでに優しくしてくれるというのに、どうして坂下直樹はあんな仕打ちをするのだろう。私の一体どこが、坂下あゆみに劣っているというの?

 その二つの名前を脳裏に浮かべるだけで、胸の奥から吐き気がこみ上げてくる。同時に、自嘲めいた笑みが漏れた。まさか自分が坂下あゆみ如きと張り合おうとするなんて、私ってどれだけ惨めな女なのだろう。

 坂本天宇に抱きかかえられたまま、どれほどの時間を歩いただろうか。私たちはようやく、人気のない荒野に佇む一軒の古びた小屋を見つけ出した。坂本天宇が言う...

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