第79章

ふと顔を上げると、そこに立っていたのは他ならぬ、私の友人だった。

「坂本天宇、どうしてここに?」

「その台詞、そっくりそのまま君に返すよ。病人は禁酒のはずだろ?」

 坂本天宇はそう言いながら、私の手から酒瓶を奪い取り、そのまま自分自身で一口煽った。

「わ、私は……お酒なんて飲んでないよ、ただ、その……」

 私は悪戯を見咎められた子供のように、シャツの裾を握りしめたまましどろもどろになる。

 坂本天宇は人差し指で、私の額をトンと突いた。

「今回だけだからね」

 私はコクコクと、それこそ小鳥がついばむような勢いで何度も頷いた。

 すると、坂本天宇が手を伸ばし、私の顎をくいと持ち...

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