第88章

松下空は、私がまさか名指しで確認を取るとは思っていなかったらしく、不快そうに眉をひそめた。

 おそらく彼女の内心は、まだ携帯電話を手にしていないうちから私にあれこれ指図されるのが気に食わず、苛立ちを募らせているのだろう。しかし、目の前にぶら下げられた最新のiPhoneという餌の魅力には抗えない。彼女は迷った末、不承不承といった様子で「うん」と頷いた。

 今回、霧雨みよは以前のように私に縋り付いて誓ったりはしなかった。ただ、その華奢な体がびくりと震えたのを、私は見逃さなかった。潤んだ瞳を見るに、前回のあれは単なるポーズだったのかもしれないが、今回の涙は、きっと心からのものだろう。

 新し...

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