第12章

大勝利を収めた三原由美は、気分上々で車を飛ばしながら、思わず歌を口ずさんでいた。

しかし、前方の信号が突然青から赤に変わったことに気づかなかった。

歩行者たちが整然と横断歩道を渡り始め、その中の一人、背の高い男性がスマホを見ながら歩いており、三原由美の車に気づかず、止まる気配もなかった。

三原由美がブレーキを踏んだ時にはもう遅く、男性は車にぶつかり、地面に倒れ込んで動かなくなった。

驚いた三原由美は急いで車を降り、男性の頭を持ち上げて怪我の具合を確認しようとしたが、男性が彼女を押しのけ、自分で立ち上がり、無表情で服の埃を払った。

男性の腫れた手首と擦りむけた手のひらを見て、三原由美...

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