第145章

三原由美は拳を強く握りしめ、胸を刺すような痛みを必死に抑えていた。

玄関を出ようとした瞬間、背後から高波直俊の声が突然響いた。「待って……」

三原由美は足を止めたが、振り向くことはなかった。

高波直俊が尋ねた。「一体どういうことなんだ?なぜ智司を私に預けるんだ?俺はお前と約束したはずだ。ずっとお前と一緒にいた智司を、今さら手放すなんて、彼にとって酷すぎないか?」

三原由美は慌てて否定した。「手放したわけじゃないわ、私は……私はただ……」一瞬言葉を詰まらせ、痛みを堪えながら言った。「私よりもあなたの方が彼を守れる。彼はただ環境が変わるだけで、私たちは親子のままよ、その関...

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