第38章

「ああ、三原由美が明と女の子を連れているのを見たって言うのか」

高波直俊は適当に彼の言葉を繰り返した。田中和也は怒りで胸が痛くなった。

「本当のことを言っているんだ」

高波直俊は彼をバカを見るような目で一瞥し、ずっとそばにいた青木直樹の方を向いた。

「お前は見たのか?」

青木直樹は少し呆れた様子で、「見てないよ。ただこいつがフリーフォールで乗ってる時に見たって言い張って、降りた後は吐いたり気絶したりしてたけどな」

怖くて息もできない三原智司は慌てて話を引き取った。

「すごいね、田中おじさん、幻覚でも見たんじゃない?」

その場にいた全員が自分を信じていないことに、田中和也は声の...

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