第8章

高波明の反応とは対照的に、高波直俊の表情は一瞬で冷たくなった。彼は三原由美の前に立ちはだかり、明を取り戻そうとした。声はまるで氷のように冷たかった。

「どうしてここに来たんだ?」

しかし、彼のその強がりは息子自身によって完全に打ち砕かれた。高波明は彼に向かって舌を出し、三原由美にしっかりと抱きついた。

「ママが僕に会いに来たんだ。僕は知ってたよ、絶対にママだって。パパはさっき僕を騙そうとしたんだ」

さっきまで怒っていた高波明が、今は三原由美の腕の中で満足そうにしているのを見て、高波直俊の胸が痛くなり、三原由美に対してさらに冷たくなった。

「ここは病室だ。関係ない人は早く出て行け。さ...

ログインして続きを読む