第92章

三原由美は一晩中うわごとを言い続けた。

高波直俊はベッドの傍らで彼女の手を握り、一晩中付き添っていた。

翌朝になってようやく彼女は深い眠りに落ち、一晩中点滴を受けたおかげで顔色もだいぶ良くなっていた。

高波久人が朝食を持って部屋に入ってきたとき、高波直俊が三原由美の手をしっかりと握り、絶え間なく彼女を慰め、優しい声でささやくように話しかけている姿が目に入った。まるで彼女が世界に二つとない宝物であるかのような優しさだった。

彼はボスがこれほど優しい姿を見たことがなく、少し感慨深くなった。

今となっては後の祭りだ。

五年前にボスが奥様に対して今の十分の一でも優...

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