第10章

橋野悠希も、さすがに目を見張った。

こんな偶然、ある?

冷えた瞳の奥に、深い光がすっと集まる。予想外――それが率直な感想だった。

こうなった以上、まずは綾波東也を叩き起こすしかない。

橋野悠希は長川貞也を冷ややかに見上げ、澄んだ声で言い放つ。

「私は、前半をもらう」

「長川様は名の通ったお方でしょう。レディーファーストくらい、ご存じよね」

長川貞也が彼女の腹の内に気づかないはずがない。気だるげな仕草で、手にしていた紙切れをひらりと揺らした。

「美人を前にして、あいにく譲る気はない」

橋野悠希は危うく言葉に詰まるところだった。

長川貞也の浮名なんて気にしたことはない。だが、...

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