第100章

その問いかけに、橋野悠希は一瞬、目の奥がふっと曖昧に揺れた。彼女は着信画面に表示された、やけにくっきりした名前を軽く振って見せる。

「朝日静哉から……たぶん、ワイナリーの件で私に用があるんじゃない?」

そう言いながら、電話に出るつもりで外へ向かおうとした。だが長川貞也は、三歩を二歩で詰める勢いで近づく。

次の瞬間、彼は橋野悠希のスマホをひったくるように自分の手へ移し、そのまま通話を切った。黒く艶のある瞳に浮かんでいるのは、淡い――けれど確かな独占欲。

「俺のそばにいる間は、くだらないことで気を散らすな」

とくに、朝日静哉に関わることは――。

強引にスマホを取り上げられても、橋野悠...

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