第11章

浴室から出ると、長川貞也はすでに平静を取り戻していた。幸い、橋野悠希は目を覚ましておらず、さっきの気まずさを知る由もない。

彼はバルコニーの窓を半分だけ開け、それから奥の部屋を出て、綾波東也を起こして見張りを頼もうとした。だが、目に入ったのはがらんとしたリビング。そこでようやく悟る。

――部屋、間違えた。

左右の二部屋は向きが違う。軽く身なりを整え、ドアを押そうとした、その時。

廊下の方から、綾波東也の狂ったような声がマイク越しに響き、クラブ中に轟いた。

「今夜の会計、俺が持つ! 踊れ!」

三階の手すりから見下ろすと、ステージのど真ん中でネクタイを振り回し、腰をくねらせている男が...

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