第16章

長川貞也の眼差しは深く、刃のように鋭い。だが表情には一切の波がない。

そのせいで橋野悠希は警戒を緩め、試験管と銀針の処理に意識を集中させた。

――次の瞬間。

背後から、ひゅっと風を切る気配。

男が矢のように踏み込み、彼女の手首を掴むと、そのまま袖をまくり上げようとする。

橋野悠希の瞳に怒りが灯った。

彼女は容赦なく男の足を踏み抜く。男が「ぐっ」と喉を詰まらせた隙に、悠希はさっと距離を取って安全圏へ退いた。

「長川様、どういうおつもりですか」

わかっていて、あえて聞く。

「ユキ先生の手……怪我をしているのか? 気になってな」

言い終えるより早く、長川貞也がまた詰めてくる。ど...

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