第30章

銀灰色の特別カスタム仕様マイバッハで、鈴木青はアクセルを踏み込み、ブルーベイを離れて長川貞也を会社まで送った。

ルームミラー越しに、眉間をわずかに寄せた社長の横顔が映る。鈴木青は慎重に声をかけた。

「長川様、何か……お気づきの点でも?」

橋野悠希の不審なところといえば、あの数年間の調査の空白くらいで、他に目立った異常はない。だが長川貞也は、どうにも拭えない違和感を抱えていた。

手が届きそうな距離にあるのに、糸口が見つからない。掴んだと思った瞬間、肝心なものが指の間からするりと抜け落ちる。ユキも、橋野悠希も――どちらも気まぐれで手強い狐みたいだ。

なぜ、その二人が同じ輪郭で重なるのか...

ログインして続きを読む