第38章

橋野悠希は、降って湧いたような非難に一瞬きょとんとした。けれど橋野メメが理屈の通じないタイプだと知っている以上、言い返し方も限られる。

「お嬢さん、私は普通に歩いていただけです。押してなんかいません」

「は? じゃあ私があんたを陥れたって言いたいわけ? 金ふんだくろうとしてるって?」

「そういう意味では――」

「じゃあどういう意味よ、このクソ婆。嫉妬してんでしょ、私に」

吐き捨てるなり、橋野メメはアシスタントが止める間もなく、橋野悠希の肩を思いきり突き飛ばした。

「っ――!」

鈍い音。悠希の背中が壁に叩きつけられる。頭は打たなかったが、背中に走った痛みは熱を帯びてじりじりと広が...

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