第53章

薬粉が酒にするすると溶けていくのを見つめながら、鈴木美由紀の瞳に毒々しい光が走った。――この一杯を、誰かに飲ませる。相手が「何か」起こせばいい。

そうすれば、全部を橋野悠希のせいにできる。

今この場で称賛を浴びている橋野悠希が、次の瞬間には唾を吐きかけられ、嫌悪される。そう想像しただけで、胸の奥が甘く満たされていく。

完全に混ざるのを待っていた、その時だった。

綾波東也がふいに背後から現れ、彼女の腕をがしっと掴んだ。

「その酒に、何を入れた」

鋭い眼差し。鈴木美由紀はびくりと肩を跳ねさせたが、相手の顔に見覚えがないと分かると、すぐに顎を上げる。

「私が何をしようと、あなたに関係...

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