第59章

「お前のオーダースーツさ、ほんとに水洗いして平気なの? 一発で終わらない?」

橋野悠希は、まるで阿呆を見るみたいな目で長川貞也を見た。

「金じゃ買えないんだよ。俺がやりたいって気持ちはな」

――なるほど。要するに、私を一回いじめたいだけだ。

「いいよ。じゃあ数日後、また来て」

そう言って悠希は、スーツをソファにぽいっと放った。どうせ洗うなら、もう少し汚れていたほうが洗い甲斐がある。

貞也は気にも留めない。むしろ、そのスーツをぐいっと踏みつけた。記憶が正しければ、あのとき朝日静哉の手が置かれていたのは、まさにこの辺りだ。

足りないとでも言うように、ぐり、ぐり、と靴底で二度ほど捻る...

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