第61章

橋野悠希は、またしても声を上げて泣き崩れる佐藤緑を一瞥すると、クルミに向かって手招きした。

「クルミ。お姉さんと一緒に、これから病院に行くときの服、まとめておく?」

クルミはおとなしくこくりと頷く。悠希がその小さな手を取ろうとした、その瞬間――。

ドン、ドン、と玄関の扉が再び叩かれた。

悠希は怪訝に眉を寄せる。まだ開けてもいないのに、クルミがぎゅっと彼女の袖を掴んだ。

怯えでいっぱいの瞳。

「お姉さん……行かないで」

悠希の眉間がきゅっと寄る。門の外、あの汚れた一帯が脳裏をよぎり、目の温度がすっと下がった。

次の瞬間。

ひゅっと風を切る音がして、塀の向こうから石が投げ込まれ...

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