第65章

「貞也。たしかに私は今まで涼のこと、ろくに気にかけてこなかった。でも――あの子は私の子よ。身を切って産んだんだもの。心配しないわけがないじゃない!」

鈴木美由紀は自分の言葉に説得力を持たせるように、床に散った牛乳の残骸を指さした。

「昨日、考えたの。私、ちゃんと涼のお母さんになろうって。だから今朝はわざわざ牛乳を温めて、涼と仲直りしようと思って部屋に入ったのよ。そしたら――涼が、音も立てずに横たわってて……」

「母親が焦らないでいられると思う?」

長川貞也は、そんな弁解を聞く気などさらさらなかった。手近にあった上着をひっつかむと涼をくるみ、抱きかかえたまま執事に命じる。

「車を出せ...

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