第66章

涼はもう目を覚ましていた。さっきまで鈴木美由紀に抱きかかえられて散々揺さぶられていたのに、その間はずっと目を開けなかった。けれど今は、どこか悔しそうに目尻を赤くしながらも涙は落とさず、むしろぱっと花が咲くみたいな笑顔を見せている。

橋野悠希は胸がきゅっと痛んで、小さな頭をそっと撫でた。念のため丁寧に状態を確かめると、ふう、と息をつく。

涼の様子は、鈴木美由紀が騒いだほど深刻ではない。

「涼、今どんな感じ? お姉さんに教えて」

橋野悠希がやわらかく問いかけると、小さな子はもじもじしながら答えた。

「おなかが……ちょっと痛い。頭も、くらくらする」

声はか細い。けれど、その瞳には橋野悠...

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